三井住友ファイナンス&グループ SMFL SMFLレンタル
メニュー

アイコン:ロボット・実用機器ロボット・実用機器

  • パーソナルロボット
  • サービスロボット
  • パーソナルワーキングブース
バナー:採用情報

EMCの概要と代表的な試験規格

EMCの概要

EMCは日本産業規格(JIS)では「電磁両立性」と表され、主に電気・電子機器から発する電磁妨害波が他の機器/システムに対しても影響を与えず、且つ他の機器/システムから発せられた電磁妨害波を受けても自身の動作に影響を及ぼさないこととされています。 EMCは、機器/システムから発する電磁妨害波に対する要求「EMI(Electro Magnetic Interference)- 電磁妨害 -」と他の機器/システムから発せられた電磁妨害波に対する耐性「EMS(Electro Magnetic Susceptibility)- 電磁感受性 -」とに分けられています。前者は「エミッション」、後者は「イミュニティ」とも呼ばれます。

さらにEMIには、機器/システムから放射された不要な電磁波(電磁気的な雑音。一般的に「ノイズ」と呼ばれる)をアンテナなどで計測する「放射エミッション測定」、電源線等に重畳されたノイズを計測する「伝導エミッション測定」があり、EMSも同様に、アンテナなどを使用して機器/システムを電磁界に曝しその耐性を試験する「放射イミュニティ試験」、電源線等に妨害波を印加し耐性を試験する「伝導イミュニティ試験」に分けられますが、この他にも器具や人体からの静電気を模擬したパルスを印加する「静電気放電イミュニティ試験」、落雷時に発生する誘導雷を模擬したパルスを印加する「サージイミュニティ試験」などがあります。

図

EMCの規格には特定の製品(UPS、アーク溶接機など)ごとに要求される「製品規格(Product Standard)」、これよりも粗く分類されたカテゴリ(マルチメディア機器、ISM機器など)ごとに要求される「製品群規格(Product Family Standard)」があり、また製品の使用環境※1によって分類される「共通規格(Generic Standard)」、個々の規格から独立してすべての製品に適用可能で、他の規格(製品規格、製品群規格、共通規格)から参照されることを意図して試験法などを規定する「基本規格(Basic Standard)」があります。

これらの規格を作成する主な組織として、電気/電子分野における国際規格の作成を行う「国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)」、IECの特別委員会であり機器/システムからの不要な電磁波についての許容値や測定方法を規定する「国際無線障害特別委員会(CISPR:Comite international Special des Perturbations Radioelectriques)」があります。この他にも自動車などの規格を作成する「国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)」、電気通信に関する国際的な勧告を作成する「国際電気通信連合 電気通信標準化部門(ITU-T:International Telecommunication Union – Telecommunication Standardization Sector)」などによって様々な規格・勧告が作成されています。

※1 「住宅、商業および軽工業環境」「工業環境」があり、それぞれ「Class B」「Class A」と呼称される

上へ戻る ▲

SMFLレンタルでは、EMCに関する測定/試験に仕様する様々な機器をレンタルでご提供します。弊社HPに掲載ないものについても協力会社等からご用意できる場合がありますので、詳しくはお問い合わせください。

放射/伝導エミッション

EMCにおけるエミッション(EMI)とは、文字通り機器/システムから「発せられる」電磁妨害波のことです。19世紀末のドイツにおける無線の電波障害に端を発し、ラジオの受信障害などが問題視されるにつれて放射される電磁妨害に対する「規制」が始まりました。平成24年に発生した、LEDのインバータノイズによる鉄道無線への干渉などは記憶に新しいところです。このように、現在の電気/電子機器においてEMCを考慮しない設計はあり得ないと言っても過言ではありません。

放射されるノイズへの対策法も日々進化しており近年ではシミュレーションによる解析なども行われるようになりましたが、昔はとりあえず試験サイトに持ち込んで測定、規格値を超えたらその場で原因を特定して対策…といったことも少なくありませんでした。なかなか効果が出ず作業も深夜に及び、仕事が終わった順から現場(当時はオープンサイト)に行って対策を手伝うので気づけば10人以上もドーム内に集まっていたなどということも…。

話が逸れてしまいましたが、前述の通りEMIは放射エミッションと伝導エミッションに大別されます。放射エミッションでは、被試験装置を電波暗室内のターンテーブル上に設置して360°回転、10m(3m)の距離にある受信アンテナの高さを1m~4mまで変化させてEMIレシーバまたはスペクトラムアナライザで放射レベルを観測し、最大となったところでこれを記録します(ターンテーブルの使用/不使用や受信アンテナの距離/高さは適用する規格によって変わる)。

伝導エミッションは電波暗室若しくはシールドルーム内で測定されます。電源ラインに重畳されたノイズは主に擬似電源回路網(LISN, AMN)で、LANなどの通信ラインに重畳されたノイズはインピーダンス安定化回路網(ISN,AAN)を介してEMIレシーバまたはスペクトラムアナライザで測定します。

ここでは通称として「放射エミッション測定」と表記していますが、他にも「放射妨害波測定」や「雑音電界強度測定」などと言われることもあり、伝導エミッション測定も同様に「伝導妨害波測定」や「雑音端子電圧測定」と言われることがあります。それぞれの基本規格であるCISPR 16-2-3及び16-2-1には「Radiated disturbance measurement」「Conducted disturbance measurement」とあるため、「放射妨害波測定」「伝導妨害波測定」が正式でしょうか。

この他、家庭用電気機器を対象とする規格であるCISPR 14-1などでは「雑音電力測定」や「負荷端子電圧測定」が行われることがあります。

  • 図1

    放射エミッション測定のイメージ

  • 図2

    伝導エミッション測定のイメージ

上へ戻る ▲

放射エミッション測定の概要

放射エミッションの規格で代表的な規格に、家庭用電気機器に適用される「CISPR 14-1」やマルチメディア機器に適用される「CISPR 32」などがあります。以前は放送受信機器向けの「CISPR 13」と情報処理装置向けの「CISPR 22」がありましたが、世の中の機器のマルチメディア化に対応しきれないために2017年3月に廃止されCISPR 32に統合されました。

CISPR 32では30~1000 MHz及び1~6 GHzの周波数範囲で限度値が規定されており、30~1000 MHzはSAC(Semi Anechoic Chamber:半無響電波暗室)内で、1~6 GHzはFAR(Fully Anechoic Room:全無響電波暗室)内で測定されます。どちらも「電波暗室」と呼ばれますが、SACの床面には電波吸収体がありません。ちなみに自動車関連の規格(CISPR 25やISO 11452-2など)ではALSE(Absorber-Lined Shielded Enclosures)と表記されています。

これらの電波暗室で放射エミッション測定を行う際には、事前にSACはNSA(Normalized Site Attenuation:正規化サイトアッテネーション)、FARはSvswr(Site-Voltage Standing Wave Ratio:サイト電圧定在波比)を測定することによってその特性を評価する必要があります。(CISPR 16-1-1で規定)またEMIレシーバの検波方法は、30~1000 MHzではQP(Quasi-peak:準尖頭値)、1~6 GHzではPK(Peak:尖頭値)とAV(Average:平均値)が使用され、測定された値を限度値と比較します。

※測定対象のノイズが放射される「持続時間」と「頻度」により、各検波方法で測定した値が変わる

放射エミッション測定は通常、EUT(Equipment Under Test:被試験装置)~アンテナ間の距離を10mまたは3m(10mのことが多い)にして行われます。EUTを回転させ、アンテナの高さを1~4mで昇降させて対象の周波数ごとに最大値を走査し記録します。最大値の走査はスペクトラムアナライザを使用し検波はEMIレシーバで行うのが主流でしたが、最近では操作~検波までを一台で行うことが可能なリアルタイムスペクトラムアナライザが使用されるようになってきました。(ローデ・シュワルツ ESWシリーズ、キーサイト・テクノロジー N9048Bなど)どちらの場合でも、走査には専用のソフトウェアを使用するのが一般的です。

測定結果の合否は規格毎に規定されている限度値と比較して判定されます。参考までに、以下にCISPR 32の限度値を表に、これをグラフにしたものを図1,2に示します。

表1 CISPR 32の限度値(測定距離:30~1000MHz=10m、1~6GHz=3mの場合)
Class Aの限度値(dBμV/m) Class Bの限度値(dBμV/m)
QP PK AV QP PK AV
30~230 MHz 40 30
230~1000 MHz 47 37
1~3 GHz 76 56 50 70
3~6 GHz 80 60 54 74
図1

図1 CISPR 32 放射エミッションの限度値(30~1000MHz)

図2

図2 CISPR 32放射エミッションの限度値の限度値(1~6GHz)

CISPR 32では最高で6 GHzまで測定が行われますが、その上限周波数 FXはEUTの内部で使用される最高周波数によって変わります。(表2参照)

FX :EUTの内部で生成若しくは使用される最高の基本周波数又はEUTが動作する最高の周波数(集積回路内部だけで使用される周波数を含む)

表2 測定周波数の上限
内部で使用される最高周波数 測定周波数の上限
FX ≦ 108 MHz 1 GHz
108 MHz < FX ≦ 500 MHz 2 GHz
500 MHz < FX ≦ 1 GHz 5 GHz
FX > 1 GHz 5 × FX または6 GHzのどちらか低い方

注1FM及びTV放送受信機については、FXは生成又は使用する最高周波数のうち局部発信周波数と同調周波数を除いた周波数から決定される

注2家庭用衛星放送受信システムの屋外ユニットの最高測定周波数は18 GHz

注3FXが不明な場合は6 GHzまで実施

参考 総務省「マルチメディア機器の電磁両立性 – エミッション要求事項 -」【平成27年12月答申】

上へ戻る ▲

伝導エミッションの測定の概要

伝導エミッション測定では、電源ライン及び信号ラインに重畳されたノイズを測定します。CISPR 32など多くの規格では150 kHz~30 MHzの周波数範囲を測定するよう規定されていますが、CISPR 15(電気照明及び類似機器)などでは9kHzからの限度値が規定されています。

表1 CISPR 32 伝導エミッションの限度値
Class Aの限度値(dBμV/m) Class Bの限度値(dBμV/m)
QP AV QP AV
0.15~0.5 MHz 79 66 66 56
0.5~5 MHz 73 60 56 46
5~30 MHz 73 60 60 50
図1

図1 CISPR 32 伝導エミッション(電源ポート)の限度値

電源ラインのノイズを測定する際に主に用いられるのが擬似電源回路網です。擬似電源回路網は、CISPR規格ではAMN(Artificial Mains Network)、FCC規格ではLISN(Line Impedance Stabilization Network)と表記されています。よく擬似電源回路網のことを「リッスン(リスン)」と呼称しますが、これはFCC規格の表記から来ているものです。

擬似電源回路網はEUTから電源ラインに重畳されたノイズ(高周波成分)を取り出し測定器に出力するものですが、その他にも「系統側からのノイズを抑制する」「EUTからみた電源回路のインピーダンスを一定にして安定した測定を行えるようにする」などの役割があります。擬似電源回路網を系統に接続する際は、漏電ブレーカの差動を防ぐために絶縁トランスを介する等の措置を執る必要があります。

LAN、CATVなどの有線ネットワークなどの信号ラインに重畳されたノイズの測定には、これに合わせた不平衡擬似回路網(AAN:Asymmetric Artificial Network, ISN:Impedance Stabilization Network)や擬似回路網(AN:Artificial Network)を使用して測定されます。これに加えてCISPR 32ではアンテナポート、光ファイバ、同軸ケーブル及び非シールドの不平衡ラインなども測定対象となっており、これらの測定にはAAN, ANの他に電流プローブや容量性電圧プローブが使用されます。

参考 総務省「マルチメディア機器の電磁両立性 – エミッション要求事項 -」【平成27年12月答申】

上へ戻る ▲

放射/伝導イミュニティ

Immunity – 辞書を引くと「免疫:体内に侵入した病原菌や毒素などに抵抗する防御力を持っている状態」と記載されています。EMCでも「(照射あるいは直接印可されて)侵入した妨害波に対する防御力(耐性)を持つ」という意味では同様です。EMS-Electro Magnetic Susceptibility-と表記されますが、Susceptibility(感受性)が高いと誤動作を起こしてしまうので、妨害波に対しては鈍感な方が良いということになります。

イミュニティ試験では妨害波を意図的に機器/システムに与えてその耐性を評価しますが、アンテナから照射する方法が放射イミュニティ試験、専用の回路網などを使用して電源ラインなどに印可する方法が伝導イミュニティ試験と呼ばれています。

妨害波に対する耐性を上げるためには、エミッションにおいてもそうですが対策が必要になります。シールドやグラウンドの強化、フィルタの追加などを行う場合がありますが、部品を追加するとその分費用が掛かるため様々な対策方法の中から効果的なものを、費用を考えながら選択しなければならないのもエミッションと同様です。

イミュニティ試験は妨害波を与える試験と書きましたが、IEC 61000シリーズやISO 11452シリーズでは静電気放電イミュニティ試験、電気的ファストトランジェント/バースト試験、サージイミュニティ試験、電源周波数磁界イミュニティ試験、電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験などのイミュニティ試験もあります。

表1 代表的なイミュニティ試験
IEC 61000-4-2 静電気放電イミュニティ試験
IEC 61000-4-3 放射性無線周波電磁界イミュニティ試験
IEC 61000-4-4 電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験
IEC 61000-4-5 サージイミュニティ試験
IEC 61000-4-6 無線周波電磁界に誘導される伝導妨害に対するイミュニティ試験
IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験
IEC 61000-4-11 電圧ディップ・瞬断および電圧変動に対するイミュニティ試験

上へ戻る ▲

まずはお気軽にお問い合わせください