MIL-STD-461 概要
The basic military EMC specification and it’s evolution over the years
参考:DEPARTMENT OF DEFENSE INTERFACE STANDARD MIL-STD-461G
電磁妨害(EMI)および電磁感受性(EMS)に関する検証要件を規定した、米国国防総省(DoD)が制定するEMCの軍事用規格(Military Standard)で現在はRevision Gが発行されています。試験は伝導(Conducted)と放射(Radiated)それぞれで妨害波の放出(Emission)と妨害波への感受性(Susceptibility)の4種類に大別※1され、それぞれの中で機器またはサブシステムの種類とその目的毎に要求事項および試験手順が規定されています。
※1 CE:Conducted Emission, CS:Conducted Susceptibility,
RE:Radiated Emission, RS:Radiated Susceptibility
- CE101 伝導エミッション 可聴周波数電流,電源ポート
CE101 は、EUTの電源ライン(ACおよびDC)に重畳された30 Hz(AC電源の場合は電源周波数の2倍以上) ~ 10 kHz の高周波電流を、電流プローブを用いて測定します。
- CE102 伝導エミッション 無線周波数電圧,電源ポート
CE102は、EUTの電源ライン(ACおよびDC)に重畳された10kHz ~ 10MHzまでの高周波電圧を電源インピーダンス安定化回路網(LISN:Line-Impedance Stabilization Network)を用いて測定します。
- CE106 伝導エミッション アンテナポート
CE106は10kHz ~ 40GHzまでが適用範囲で、機器のアンテナポートから放射される妨害波を同軸ケーブルを介して直接測定します。測定周波数の上限は、この時、送信機が意図する周波数帯域内での放射については除外され、また設計上取り外しできないアンテナの場合も対象外になります。
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- CS101 伝導感受性 電源ポート
CS101では電源ラインに結合される妨害波に対するEUTの耐性を、電源がDCの場合は30Hz ~ 150kHzの周波数範囲で、ACの場合は上限が電源周波数の2倍または150kHzのいずれかで試験されます。ACの場合については入力される電流が30A以下のものが対象です。
- CS103 伝導感受性 アンテナポート,相互変調
CS103ではアンテナポートに複数の不要な信号が入力され、これらの信号が相互変調を起こした際の受信機への影響を15kHz ~ 10GHzの周波数範囲で試験されます。試験で使用される信号は、例えば1台のSGからむ延長の信号を、もう一つのSGから受信機に合わせた信号を出力し、これらをコンバイナで合成したものが使用されます。
- CS104 伝導感受性 アンテナポート,不要信号の除去
CS104では、受信機の能力では排除しきれない不要な信号がアンテナポートに入力された場合の受信機への影響を30Hz ~ 20GHzの周波数範囲で試験されます。受信機が想定する周波数以外ではフィルタによる不要信号の排除は比較的容易ですが、近傍では排除しきれない可能性があるため受信機への影響が大きくなる可能性があります。
- CS105 伝導感受性 アンテナポート,クロスモジュレーション
CS105は振幅変調された信号を処理する受信機に対してのみ適用され、30Hz ~ 20GHzの周波数範囲で試験されます。受信機が想定する周波数付近に高いレベルの信号が入力された時、受信フロントエンドのゲインも変調されることでクロスモジュレーションが生じる可能性があります。
- CS106 伝導感受性 過渡現象,電源ポート
CS106ではDC ~ 60Hzの周波数範囲において、電源の瞬停や入力電圧の低下などによって引き起こされる電源ポートにおける過渡現象に対する耐性が試験されます。
- CS109 伝導感受性 構造体電流
CS109は、動作周波数が100kHz以下でその感度が1μV以上のハンドヘルドタイプ以外の機器に対して、60Hz ~ 100kHzの周波数範囲においてシャーシに流れる電流に対する機器の耐性について試験されます。シャーシ電流は磁場を生成し、これが内部回路に放射されて機器の性能に影響を与える可能性があります。
- CS114 伝導感受性 バルクケーブルインジェクション
CS114の試験周波数は10kHz ~ 200MHzで、全ての相互接続ケーブルおよび電源ケーブルに適用されます。このように低い周波数ではアンテナからの放射による電磁界照射試験が困難であり、且つ機器本体ではなくケーブルに結合されるため通常はBCI(バルク・カレント・インジェクション)プローブをケーブルにクランプし妨害波を注入することで実施されます。印加される妨害波は変調周波数 10kHz、デューティ比50%のパルス変調信号で、10kHz ~ 200MHzで掃引されます。
- CS115 伝導感受性 バルクケーブルインジェクション,インパルス励起
CS115は全ての相互接続ケーブルおよび電源ケーブルに適用され試験のセッティングもCS114と同様ですが、立ち上がりおよび立ち下がりが2ns以下、パルス幅が30ns以上、繰り返し周期が30Hzの矩形波が1分間印加されます。
- CS116 伝導感受性 減衰正弦波過渡現象,ケーブルおよび電源ポート
CS116は全ての相互接続ケーブルおよび電源ケーブルに適用され試験のセッティングもCS114と同様ですが、0.01, 0.1, 1, 10, 30 および 100MHzのそれぞれの周期で電流値が減少していく減衰正弦波が印加されます。
- CS117 伝導感受性 雷過渡現象,ケーブルおよび電源ポート
CS117は全ての安全上重要な機器の相互接続ケーブルと電源ケーブル及びハイ側の電源リード、それ自体は直接安全に関わらないが安全上重要な機能を実行する機器の一部またはこれに接続されている相互接続ケーブルに適用され、雷によってケーブルに誘導される過渡妨害への耐性が試験されます。(直撃雷による影響は考慮されない)
- CS118 伝導感受性 人体からの静電気放電
CS118は、電源が投入された状態のEUTに対し人体から発せられる静電気への耐性を試験します。試験箇所は通常の使用中に人が接触可能なEUTのポイントで、使用する静電気試験器および試験方法はIEC 61000-4-2とほぼ同じです。この試験は兵器に対しては適用されません。
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- RE101 放射エミッション 磁界
RE101では、機器やサブシステムの筐体・ケーブルからの磁界について、30Hz ~ 100kHzの周波数範囲で測定します(アンテナから送信される基本波とその占有帯域幅は除外)。測定に使用するループセンサとEUTの距離は7cmで、ループセンサを移動しながら測定用レシーバを監視し指示値が最大となるにポイントを探します。
- RE102 放射エミッション 電界
RE102では、機器やサブシステムの筐体・ケーブルからの電界について、10kHz ~ 18GHzの周波数範囲で測定します(アンテナから送信される基本波とその占有帯域幅は除外)。ただし地上で運用されるもの及び空軍の航空機用の機器については、下限周波数は2MHzになります。
- RE103 放射エミッション アンテナ,スプリアスおよび高調波
RE103はCE106と同様に送信機から信号が送信されている状態で試験され、CE106の代替として使用することができます。10kHz ~ 40GHzの周波数範囲で高調波およびスプリアスが測定されますが、下限周波数および上限周波数はEUTの動作周波数、最大周波数によって決定されます。この時、送信信号の送信帯域幅内または基本周波数の±5%のいずれか大きい方は試験の対象外になります。高調波およびスプリアスは基本波から少なくとも80dB低い必要がありますが、第2および第3高調波については-20dBmまたは基本波から少なくとも80dB低い値にする必要があります。
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