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代表的なイミュニティ試験

IEC 61000-4-2 静電気放電イミュニティ試験

参考 JIS 61000-4-2:2012

人体に帯電した静電気が放電されることによって引き起こされる障害は、対象の機器などに深刻なダメージを与える場合があります。静電気放電イミュニティ試験ではこのような放電現象を模擬し、静電気によって対象の機器がどのような影響を受けるかを試験します。試験にはESDシミュレータが使用され、放電チップと呼ばれる電極から接触または気中での放電によって静電気を印加します。試験には直接放電と間接放電があり、直接放電はさらに接触放電と気中放電に分けられます。

直接放電における接触放電はEUTの金属部分に対して行われ、先端が尖った円錐形の放電チップが使用されます。先端を金属部分に接触させ、1秒以上の間隔を空けて1ポイントにつき10回放電します。これに対して気中放電は、EUTの非導電性部分が対象になります。先端の丸い放電チップを使用し、シミュレータのトリガーを引いた後に素早くEUTに近づけることで印可します。

間接放電はVCP(Vertical Coupling Plane:垂直結合版)及びHCP(Horizontal Coupling Plane:水平結合版)を使用して行われます(HCPはEUTが卓上機器の場合に使用)。放電チップは接触放電と同じものを使用しVCP及びHCPに対して印可することで、EUTの近くのものに静電気が放電された場合を模擬します(放電方法は直接放電と同様)。

静電気は周囲の環境による影響が大きいため、気中放電を行う場合の気象条件が規格によって定められています。
(特定の気象条件下で使用することを意図した機器を除く)

表1 気中放電を行う場合の気象条件
気温 15~35℃
相対湿度 30~60%
気圧 86~106kPa
表2 試験レベル
レベル 接触放電(kV) 気中放電(kV)
1 2 2
2 4 4
3 6 8
4 8 15
X 特殊 特殊
図1 試験配置の例

図1 試験配置の例

表3 接触放電電流波形の仕様
レベル 試験電圧
(KV)
ピーク電流 Ip
(A)
±15%
立上り時間 tr
(ns)
±25%
30ns時の電流 I30
(A)
±30%
60ns時の電流 I60
(A)
±30%
1 2 7.5 0.8 4 2
2 4 15 0.8 8 4
3 6 22.5 0.8 12 6
4 8 30 0.8 6 8
図2 試験電圧4kVの場合の理想的な電流波形

図2 試験電圧4kVの場合の理想的な電流波形

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IEC 61000-4-3 放射イミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-3:2012

放射イミュニティ試験では、アンテナから照射された電磁界の中に試験対象の機器やケーブルなどを曝し、その影響による機器の動作を確認します。

試験規格はいくつかありますが、代表的なものにIEC 61000-4-3、ISO 11452-2などがあります。試験はFAR内で行われますが、エミッション測定用とイミュニティ試験用で専用の電波暗室を用意するのではなく、多くの場合でSACのアンテナ~EUT間の床面に電波吸収体を並べることでFARの環境にして試験されます。

放射エミッション測定では事前にNSAやSvswrによって電波暗室の特性を評価しますが、放射イミュニティ試験を行う場合には照射面における電界の均一性特性を測定し、規格で定められた条件を満足することが確認されます(EUT全体に均一に電磁界を照射する為)。測定される範囲は1.5m×1.5m(UFA:Uniform Field Area)を0.5m毎に分けた全16ポイントが一般的ですが、EUTのサイズに合わせてより大きい面を均一面とすることも認められています。(1.5×1.5mより小さい面を均一面とするのは1GHz~の場合のみ)

図1 電界均一面

図1 電界均一面

マルチメディア機器に適用されるイミュニティ試験規格である「CISPR 35」など、通常の規格では80 MHz~6 GHzの周波数範囲で試験が行われます。IEC 61000-4-3では、アンテナは水平・垂直の両偏波、AM 80%/1kHzの変調波を80 MHzから1%以下のステップで掃引(滞留時間は0.5秒以上)し、EUTの4面(前後左右)に照射します。照射する電界強度(試験レベル)については表1の通りで、参照する規格によって指定されます。(ISO 11452シリーズでは周波数範囲、変調方法、試験レベルなどは異なります)

表1 IEC 61000-4-3の試験レベル
レベル 電界強度(V/m)
1 1
2 3
3 10
4 30
X 特殊

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IEC 61000-4-4 電気的ファストトランジェント/バーストイミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-4:2015

電気的ファストトランジェント(電気的高速過渡)とは、例えば何かの電源をON/OFFした時などに発生するスイッチの高速切替によるノイズなどを指します。この試験は、このような立ち上がりが早く高電圧のパルスによる過渡現象が発生した状態を模擬したパルスを、EUTの電源及び3mを超える(可能性のある)ケーブルに印可します。

波形のイメージを図 1 に示しますが、IEC 61000-4-4で規定されている一つ一つのパルスの立ち上がり時間は 5ns ±1.5ns と非常に早く、静電気放電イミュニティ試験、サージイミュニティ試験などと並んで機器にとっては厳しい(誤動作を起こしやすい)試験になります。

表1 試験レベル
レベル 電源ポート・接地ポート(PE) 信号・制御ポート
ピーク電圧(kV) 繰返し周波数(kHz) ピーク電圧(kV) 繰返し周波数(kHz)
1 0.5 5 又は 100 0.25 5 又は 100
2 1.0 5 又は 100 0.5 5 又は 100
3 2.0 5 又は 100 1.0 5 又は 100
4 4.0 5 又は 100 2.0 5 又は 100
X 特殊 特殊 特殊 特殊

パルス波形

立ち上がり時間
5ns ±1.5ns
パルス幅
50ns ± 1.5ns(50Ω終端時)
50ns +100ns -15ns(1000Ω終端時)
ピーク電圧
表1に記載の通り

EFT/B発生器の特性

極性
5ns ±1.5ns
繰返し周波数
5kHz 又は 100kHz ± 20%
バースト時間
15ms ± 3ms(5kHzの場合)
0.75ms ± 0.15ms(100kHzの場合)
バースト周期
300ms ± 60ms
図1 EFT/B発生器の特性

図1 EFT/B発生器の特性

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IEC 61000-4-5 サージイミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-5:2018

サージイミュニティ試験では、系統側の切り替えやON/OFFによる過渡現象やショート、誘導雷などによって起こる比較的大きなエネルギーの電圧・電流の変化(サージ)を模擬した波形を試験器から発生させます(雷が直撃した場合を模擬するものではありません)。この波形は電圧波形と電流波形を組み合わせたもので「コンビネーション波形」と呼ばれ、一般的には1分間に1回の間隔でEUTの電源や(屋外に敷設される)ケーブルに印加します。IEC 61000-4-5では、開放路電圧がフロントタイム 1.2μs/持続時間 50μs、短絡電流がフロントタイム 8μs/持続時間20μsの波形と規定されていますが、屋外用非シールド対称通信線への試験にはそれぞれ10/700μs – 5/320μsの波形が用いられます。

単相の電源の場合はライン間(L-N間)及びライン-グラウンド間(L-PE間, N-PE間)に印可しますが、IEC 61000-4-5では低いレベルの試験も行うように記載されています。例えば表1にあるレベル3の場合だとライン-ライン間に±0.5kVを各5回ずつ、±1.0kVを各5回ずつ、これを電源波形の0°, 90°, 180°, 270° にそれぞれ同期させて行います。ライン-グラウンド間でも同様に、±0.5kV, ±1.0kV, ±2.0kVを各5回ずつ、位相も0°, 90°, 180°, 270°に印可するため、これらをすべて合わせると320回も印可することになり、印可の間隔が1分のため単純に計算すると320分かかることになります。これが三相3線、三相4線だと更に時間が掛かるので、試験を行う際は十分な時間が必要になります。

静電気放電イミュニティ試験やEFT/Bイミュニティ試験も大きな影響を機器に与えますが、高電圧で持続時間の(比較的)長いパルスが印可されるために、機器が壊れる可能性が一番高い試験です。試作機などで電源回路が目視できるEUTの試験をすると、印可されるたびにスパークが起きるのを確認できることがあります。

表1 試験レベル
レベル 開回路試験電圧(kV)
ライン – ライン間 ライン – グラウンド間
1 0.5
2 0.5 1.0
3 1.0 2.0
4 2.0 4.0
X 特殊 特殊
図1 発生器出力での開回路電圧の波形

図1 発生器出力での開回路電圧の波形

図2 発生器出力での短絡電流の波形

図2 発生器出力での短絡電流の波形

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IEC 61000-4-6 伝導イミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-6:2017

放射イミュニティ試験ではアンテナから照射された電磁界にEUTを曝しますが、周波数が低くなるにつれ妨害波はケーブルなどに重畳されやすくなる傾向にあるため、伝導イミュニティ試験では電源ライン及び3mを超える長さの信号ラインを試験対象としCDN(Coupling-Decoupling Network:結合減結合回路網)またはEMクランプや電流注入用プローブを使用してケーブルに妨害波が印可されます※。試験規格にはIEC 61000-4-6、ISO 11452-3,4,5などがあり、IEC 61000-4-6では周波数範囲150 kHz~80 MHz、掃引の方法や変調は放射イミュニティ試験と同様で試験されます。(ISO 11452シリーズでは周波数範囲、変調方法試、験レベルなどは異なります)

対象に適したCDNがあればこれが優先される

EUT及び周辺機器はグラウンドプレーンから10cmの、信号ラインなどは3cm以上の絶縁物の上に配置し、印可する電源ラインの長さ及び信号ラインの印可ポイントはEUTから10~30cmの距離になるように設定します。この時、試験されないEUTや周辺機器の電源ラインもCDNを取付け、CDNの同軸ポートを終端する必要があります。

表1 IEC 61000-4-6の試験レベル
レベル 電界強度(V/m)
1 1
2 3
3 10
4 30
X 特殊
図1 伝導イミュニティ試験のセットアップ

図1 伝導イミュニティ試験のセットアップ

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IEC 61000-4-8 電源周波数磁界イミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-8:2016

「磁界」と聞くと、小学校理科の磁石と砂鉄の実験や中学校で学んだフレミングの左手の法則などが思い浮かびますが、電子レンジやIHクッキングヒーター、携帯電話、自動車、鉄道など、身近なところでも電流が流れているところには必ず磁界(電磁界)は発生しています。

電源周波数磁界イミュニティ試験の基本規格であるIEC 61000-4-8では、動作状態のEUTを50Hzおよび60Hzの電源周波数磁界に曝してその耐性を試験します。試験レベルは「連続磁界」と、1~3秒の短い時間印可する「短時間磁界」があり、連続磁界は周囲の機器が動作することで発生する比較的小さい定常磁界を、短時間磁界は短絡などの事故によって生じる大電流によって誘起される大きい磁界を模擬しています。

コイルに電流を流すことで試験に必要な磁界を発生させますが、使用されるコイルには卓上型EUTの試験に使用される標準正方形コイル(1m×1m, 1ターン)と床置型EUTの試験に使用される標準長方形コイル(1m×2.6m, 1ターン)があります。標準コイルに電流を流した時の磁界分布は既知であるため、表3の電流値を測定すれば発生する磁界強度が分かりますが、標準以外のコイルを使用する際は事前に磁界強度や流す電流値などの検証が必要です。

実際の試験は、EUTに対しコイルの向きを変えることで三方向から磁界を印加します。(図1参照)

何かのきっかけがあると度々話題になる電磁界による人体への影響については、EMCの規格ではなくICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)がガイドラインを出して注意を喚起しています。

表1 連続磁界の試験レベル 表2 短時間磁界の試験レベル
レベル 磁界強度
(A/m)
レベル 磁界強度
(A/m)
1 1 1 n.a.
2 3 2 n.a.
3 10 3 n.a.
4 30 4 300
5 100 5 1000
X 特別 X 特別
表3 各種誘導コイルに対する検証パラメータ
表1のレベル 1m×1m 標準コイルに対する電流値(A) 1m×2.6m 標準コイルに対する電流値(A) 標準以外の誘導コイルに対する中心の磁界強度
1 1.15 1.51 1
2 3.45 4.54 3
3 34.48 45.45 30
5 114.95 151.5 100
図1 コイルの位置(卓上機器の場合)

図1 コイルの位置(卓上機器の場合)

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IEC 61000-4-11 電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験

参考 JIS C 61000-4-11:2021

IEC 61000-4-11は50Hzまたは60Hzの交流回路(商用電源)から電力を供給される、一相あたりの定格入力電流が16A以下の電気/電子機器を対象とした規格です(16Aを超える機器についてはIEC 61000-4-34で規定)。系統や設備での短絡などの故障や同じ電力設備に接続された負荷の大きい装置の動作の急変などによって発生する、定格電圧からの突然の電圧低下や短時間の停電を模擬します。

電圧ディップとは1/2サイクルなどの短時間の電圧降下のことで、定格電圧から例えば40%などへの急な降下が規定されています。3相の電源の場合は線間電圧および相電圧に対してそれぞれ行われますが、相電圧の場合は1つの相のみ降下させる場合と2つの相を同時に降下させる場合があり、これに対し短時間停電は、全ての相を同時に、比較的長い時間(250/300サイクル)0%まで電圧を降下させます。

降下させる電圧や時間(サイクル)が規格で定められていますが(表1,2)、どれを採用するかはこれを参照する試験規格によります。また、電圧を一定時間降下させるだけなら交流電源だけでも可能ですが、規格で定められている電圧の降下および復帰の時間が1~5μsと早いため、試験は専用のシミュレータを使用して行われます。

表1 電圧ディップの試験レベル及び継続時間
クラス 試験レベル及び継続時間(ts)
1 機器の要件に応じて個別に設定
2 0%で
0.5サイクル
0%で
1サイクル
70%で
25(30)サイクル
3 0%で
0.5サイクル
0%で
1サイクル
40%で
10(12)サイクル
70%で
25(30)サイクル
80%で
250(300)サイクル

※50Hzの場合。()内は60Hzの場合。

表2 短時間停電の試験レベル及び継続時間
クラス 試験レベル及び継続時間(ts)
1 機器の要件に応じて個別に設定
2 0%で250(300)サイクル
3 0%で250(300)サイクル

※50Hzの場合は250サイクル、60Hzの場合は300サイクル。

図1 100%,0.5サイクルの波形

図1 100%,0.5サイクルの波形

図2 40%,10サイクルの波形

図2 40%,10サイクルの波形

図3 100%,250サイクルの波形

図3 100%,250サイクルの波形

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