人体に帯電した静電気が放電されることによって引き起こされる障害は、対象の機器などに深刻なダメージを与える場合があります。静電気放電イミュニティ試験ではこのような放電現象を模擬し、静電気によって対象の機器がどのような影響を受けるかを試験します。試験にはESDシミュレータが使用され、放電チップと呼ばれる電極から接触または気中での放電によって静電気を印加します。試験には直接放電と間接放電があり、直接放電はさらに接触放電と気中放電に分けられます。
直接放電における接触放電はEUTの金属部分に対して行われ、先端が尖った円錐形の放電チップが使用されます。先端を金属部分に接触させ、1秒以上の間隔を空けて1ポイントにつき10回放電します。これに対して気中放電は、EUTの非導電性部分が対象になります。先端の丸い放電チップを使用し、シミュレータのトリガーを引いた後に素早くEUTに近づけることで印可します。
間接放電はVCP(Vertical Coupling Plane:垂直結合版)及びHCP(Horizontal Coupling Plane:水平結合版)を使用して行われます(HCPはEUTが卓上機器の場合に使用)。放電チップは接触放電と同じものを使用しVCP及びHCPに対して印可することで、EUTの近くのものに静電気が放電された場合を模擬します(放電方法は直接放電と同様)。
静電気は周囲の環境による影響が大きいため、気中放電を行う場合の気象条件が規格によって定められています。
(特定の気象条件下で使用することを意図した機器を除く)
気温 | 15~35℃ |
相対湿度 | 30~60% |
気圧 | 86~106kPa |
レベル | 接触放電(kV) | 気中放電(kV) |
1 | 2 | 2 |
2 | 4 | 4 |
3 | 6 | 8 |
4 | 8 | 15 |
X | 特殊 | 特殊 |
図1 試験配置の例
レベル | 試験電圧 (KV) |
ピーク電流 Ip (A) ±15% |
立上り時間 tr (ns) ±25% |
30ns時の電流 I30 (A) ±30% |
60ns時の電流 I60 (A) ±30% |
1 | 2 | 7.5 | 0.8 | 4 | 2 |
2 | 4 | 15 | 0.8 | 8 | 4 |
3 | 6 | 22.5 | 0.8 | 12 | 6 |
4 | 8 | 30 | 0.8 | 6 | 8 |
図2 試験電圧4kVの場合の理想的な電流波形
参考 JIS C 61000-4-2:2012