サージイミュニティ試験では、系統側の切り替えやON/OFFによる過渡現象やショート、誘導雷などによって起こる比較的大きなエネルギーの電圧・電流の変化(サージ)を模擬した波形を試験器から発生させます(雷が直撃した場合を模擬するものではありません)。この波形は電圧波形と電流波形を組み合わせたもので「コンビネーション波形」と呼ばれ、一般的には1分間に1回の間隔でEUTの電源や(屋外に敷設される)ケーブルに印加します。IEC 61000-4-5では、開放路電圧がフロントタイム 1.2μs/持続時間 50μs、短絡電流がフロントタイム 8μs/持続時間20μsの波形と規定されていますが、屋外用非シールド対称通信線への試験にはそれぞれ10/700μs – 5/320μsの波形が用いられます。
単相の電源の場合はライン間(L-N間)及びライン-グラウンド間(L-PE間, N-PE間)に印可しますが、IEC 61000-4-5では低いレベルの試験も行うように記載されています。例えば表1にあるレベル3の場合だとライン-ライン間に±0.5kVを各5回ずつ、±1.0kVを各5回ずつ、これを電源波形の0°, 90°, 180°, 270° にそれぞれ同期させて行います。ライン-グラウンド間でも同様に、±0.5kV, ±1.0kV, ±2.0kVを各5回ずつ、位相も0°, 90°, 180°, 270°に印可するため、これらをすべて合わせると320回も印可することになり、印可の間隔が1分のため単純に計算すると320分かかることになります。これが三相3線、三相4線だと更に時間が掛かるので、試験を行う際は十分な時間が必要になります。
静電気放電イミュニティ試験やEFT/Bイミュニティ試験も大きな影響を機器に与えますが、高電圧で持続時間の(比較的)長いパルスが印可されるために、機器が壊れる可能性が一番高い試験です。試作機などで電源回路が目視できるEUTの試験をすると、印可されるたびにスパークが起きるのを確認できることがあります。
レベル | 開回路試験電圧(kV) | |
ライン – ライン間 | ライン – グラウンド間 | |
1 | – | 0.5 |
2 | 0.5 | 1.0 |
3 | 1.0 | 2.0 |
4 | 2.0 | 4.0 |
X | 特殊 | 特殊 |
図1 発生器出力での開回路電圧の波形
図2 発生器出力での短絡電流の波形
参考 JIS C 61000-4-5:2018