IEC 61000-4-11は50Hzまたは60Hzの交流回路(商用電源)から電力を供給される、一相あたりの定格入力電流が16A以下の電気/電子機器を対象とした規格です(16Aを超える機器についてはIEC 61000-4-34で規定)。系統や設備での短絡などの故障や同じ電力設備に接続された負荷の大きい装置の動作の急変などによって発生する、定格電圧からの突然の電圧低下や短時間の停電を模擬します。
電圧ディップとは1/2サイクルなどの短時間の電圧降下のことで、定格電圧から例えば40%などへの急な降下が規定されています。3相の電源の場合は線間電圧および相電圧に対してそれぞれ行われますが、相電圧の場合は1つの相のみ降下させる場合と2つの相を同時に降下させる場合があり、これに対し短時間停電は、全ての相を同時に、比較的長い時間(250/300サイクル)0%まで電圧を降下させます。
降下させる電圧や時間(サイクル)が規格で定められていますが(表1, 2)、どれを採用するかはこれを参照する試験規格によります。また、電圧を一定時間降下させるだけなら交流電源だけでも可能ですが、規格で定められている電圧の降下および復帰の時間が1~5μsと早いため、試験は専用のシミュレータを使用して行われます。
クラス | 試験レベル及び継続時間(ts) | ||||
1 | 機器の要件に応じて個別に設定 | ||||
2 | 0%で0.5サイクル | 0%で1サイクル | 70%で25(30)サイクル※ | ||
3 | 0%で0.5サイクル | 0%で1サイクル | 40%で10(12)サイクル※ | 70%で25(30)サイクル※ | 80%で250(300)サイクル※ |
※50Hzの場合。()内は60Hzの場合。
クラス | 試験レベル及び継続時間(ts) |
1 | 機器の要件に応じて個別に設定 |
2 | 0%で250(300)サイクル※ |
3 | 0%で250(300)サイクル※ |
※50Hzの場合は250サイクル、60Hzの場合は300サイクル。
図1 100%,0.5サイクルの波形
図2 40%,10サイクルの波形
図3 100%,250サイクルの波形
参考 JIS C 61000-4-11:2021